満月
その日私は妙にそわそわしていた。
月が見れるか心配だったのだ。
満月の時期はいつもやけに寝い。今日も午後、強烈な寝気におそわれて裏庭のオレンジ色のデッキチェアーで黒猫ミミ2とうたた寝をしてしまった。
どんな夢を見ていたのだろう
その夢は夫が帰ってきた車のドアを閉める音によって消えた。
今日は25回目の結婚記念日。特別なことは何もしないけど特別な事をしなくても良い幸せを噛み締める。お互い照れ家で面倒くさがり。愛の言葉などないがお互いの間に愛があることは確かだと思う。いちいち言葉にしなくてはいけないなんて本当に3次元は不便だ。
夫は近所のソマリアンスーパーで仕込みをしてもらったチキンウィングスをオーブンに入れた。私はおにぎりを作ってきゅうりと人参を切りディップを添えた。
夕食の後、私はおそるおそる裏のドアから外にでた。
あ!
月を見た途端、私は歓喜の声を上げてしまった。
あった!
月は満ち満ちて美しく、とても重そうだった。
新月の3日後ぐらいから見てなかったから心配しそうになったよ!
月には薄い雲でベールが掛かっていた。脳内レディオからゲスの極みのパラレルスペックの
霞がかかった心を
の部分が流れてきた。
心配なんてやっぱり必要なかったんだ。またきっとを信じていればまたきっとはやってくる。
今回の満月は魚座の満月だそうだ。フェイスブックで見た魚座の彼女の姿がちらっと心の中をよぎった。あの第三の目のホクロは描いているのかタトゥーなのかこんどあったら聞いてみよう。
いつまでも月を見ていたかったが、そろそろ夫がアイスクリームをもって帰ってくる頃だ、と思い出し私はそっと家の中に戻った。